おひさまの人
ふつうの人の持つ、力強い包容力を、遠くの海を照らす灯火のように描いている……I.T.
少女のダークな感情を描いた、珍しい話だと思う。
このシーンは、とりわけ少女の心を照らす秘密の儀式のようで、
印象に残っている。
ココロが砂糖に火をつける瞬間、底なしの恋愛感情に溺れていく自分を、
もうひとりの醒めた「自分」がじっとみつめているような、
とても不思議な気持ちになるのだ。
嫉妬ややるせない感情が、まるで暴風雨のように、
心のやさしさや細やかな愛情を吹き飛ばしてしまう。
だれだって経験したことがあるそんな冷たい感情を、
おおらかに溶かしていくのが「おひさまの人」(ココロ)だ。
瓜生作品のはじまりが、こんなささやかなおまじないだったとは。
これはぼくにとって、嬉しい発見だった。